昨今の工事費の高騰と住宅の建て時

最近、「工事費はいつ下がりますか?」と聞かれることが増えました。建築に限らず物価の上昇が続いていますが、設計事務所から見た昨今の工事費の動向をまとめました(必ずしもデータに基づくものではありません)。
工事費高騰の原因は?
冒頭の質問の意図は「待っていれば工事費は下がるのではないですか?」ということだと思うのですが、私は「今後下がる可能性は低いと思います」と答えています。ポイントは2つあります。資材費と人件費です。
まず、工事費は、バブルの崩壊やデフレによって一時的な横ばいや減少があったとしても、一貫して上がり続けています。ただ、コロナ禍以降、急激に上昇した印象です。現在はコロナ禍前と比べて2〜3割アップしたように思います。
資材費は、コロナ禍におけるウッドショックにより輸入木材の供給がストップ、木材の価格が高騰しました。また、コロナ禍が終息し、世界的に経済活動が再開されると、木材以外の建設資材の価格も上昇しています。ウクライナでの戦争や円安も価格上昇の要因であることは皆さんご存知の通りです。
一方、人件費については、資材費に比べて上昇の幅が小さいように思います。人手不足が長らく問題になっていますが、職人や現場監督の賃金は思ったほど上がっていないようです。しかし、労働時間の上限規制が導入される「2024年問題」や高齢職人の引退により、ますます人手不足感が強まり、今後は人件費も上昇していくものと思われます。
現状、ウッドショックは落ち着き、木材の価格は下落傾向にあるようですが、鉄やコンクリートは上昇を続けており、人手不足が解消する見込みもないことから、しばらくは工事費の上昇が進みそうです。
現在の工事費と建て時
では、実際にどの程度上昇したのかというと、例えば木造の新築住宅(2階建て・床面積30坪程度)の場合、本体工事の予算としてコロナ禍前の80万円/坪から、現在は100万円/坪程度は見ておいて下さい、とお客様にお願いしています。実際のご提案では、本体工事に加え、附帯工事や設計料・諸経費等を加えた工事費総額を提示していますが、いずれも上昇しています。
「結局、いつが建て時なんでしょうか?」というご質問に対しては、工事費の動向に一喜一憂することなく、ご自身やご家族のライフステージに合わせて検討することをアドバイスしています。福岡市近郊では土地価格も上昇しており、新築住宅建設のハードルは上がる一方ですが、建築設計事務所では予算配分のメリハリをつけるなど、お客様に合わせたオーダーメイドの提案が可能です。お気軽にご相談下さい。